現在、検診の方法は3種類あります。視触診、マンモグラフィー(MMG)、 超音波エコー(US)の3つです。
このうち、視触診のみによる検診の場合、必ずしも早期発見 につながっているわけではありません。このため、ほとんどの検診がマンモグラフィー を用いています。
マンモグラフィー(MMG)は、早期の非浸潤癌に特徴的な微小石灰化が検出できますが、腫瘤が検出しにくいという弱点があります。マンモグラフィーに写らない乳癌が10-20%程度あるとされ、特に40才以下で乳腺の大きい人の場合、 病変検出が困難なことがあります。
一方、超音波エコ−検査(US)は、腫瘤の検出率は高いのですが、微小石灰化の検出が困難という弱点があります。一般の乳癌検診の場合、いずれか単独の検診による乳癌の検出率は60−70%程度とされ、いずれか単独の検診では乳癌の見逃し率が30-40%あることになります。
本邦の最近の約7万6000人の検診の調査によると、マンモグラフィー単独による乳癌の検出感度は77%、一方、マンモグラフィーと超音波エコ−検査を併用した場合の検出感度は91%と報告されています。マンモグラフィー単独検診の場合の乳癌の見逃し率が23%、マンモグラフィーと超音波エコ−検査の併用検診の場合に9%という結果でした。
以上の様に、マンモグラフィーと超音波エコー検査の両方を用いる検診がベストです。40才以上の女性は、特に 気になる症状がなくても年に1回は検診を受けることをすすめます。また、母親、姉妹、祖母など、血縁関係にある家族に乳癌の人がいる場合は30才から、気になる方は20代から受けた方がよいでしょう。
マンモグラフィーによる被ばくについて
マンモグラフィーによる被曝を心配する方もいると思います。マンモグラフィーのX線量は他の部位のレントゲン検査と比べると低く、体格や乳房の大きさによっても異なりますが、マンモグラフィーによる被曝線量は1回当たり0.05 - 0.15mSV(シーベルト)とされています。環境省HPによると、人が自然界から浴びる年間放射線量は世界平均2.4mSV、日本平均2.1mSVで、日本では宇宙線0.3mSV、大地に含まれる自然放射線物質から0.33mSV、空気中のラドンから0.48mSV、飲食物から0.99mSVとされています。地域差も大きく、高い山では宇宙線被曝が多く、1500mごとに2倍になります。温泉や岩盤地域などでは地上や空気中からの被曝が高く、イランのラームサルの温泉地帯やインドのケーララ州は世界で最も自然放射線が高いことで有名で、平均10mSV程度の被曝量と言われます。フランス、米国、ブラジルは日本よりも自然放射線が高いことが知られ、特にブラジルのガラパリでは5.5mSVもあります。飛行機に乗った場合の被曝は日本−ニューヨークの往復フライトで0.11-0.16mSVとされています。このように、日常生活で被曝している放射線量の方がずっと大きい事がわかると思います。1年間、毎月マンモグラフィーをとっても、自然放射線被曝量より少ないということになります。航空機を使って海外旅行をする方がマンモグラフィー検査を受けるよりも被曝量が多いかも知れません。
当院の様にデジタルマンモグラフィーを用いる場合は、従来のフィルムマンモグラフィーと比較して被曝量が約30%程度減少します。